劇物その3
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臭素(ブロム)
臭素(Br)
 刺激性臭気を放つ揮発性、赤褐色の重い液体。強い腐食性。
 乾草、繊維類の有機物に接触させると、発火することもある。
 少量の場合、共栓ガラス瓶、多量の場合は、カーボイ、陶器製つぼ。冷所に濃塩酸、アンモニアから引き離して、直射日光を避けて、通風のよいところに貯蔵する。貯蔵容器に、飲食物の容器を使用してもよい。
 化学薬品、アニリン染料製造、写真、酸化剤、殺虫・殺菌剤、毒ガス等に使用される。
ブロムアセトンおよびこれを含有する製剤
ブロムアセトン(C3H5BrO)
 刺激臭の無色の液体。催涙性あり。市販品は黄色又は褐色。
 第一次世界大戦中催涙ガスとして使用。有機合成、試薬。
ブロムエチル
ブロムエチル(C2H5Br)
別名:臭化エチル/エチルブロマイド/ブロムエタン
 無色透明、揮発性の液体。強く光線を屈折。中性。エーテル様香気、灼くような味。
 貯蔵に、飲食物の容器を使用してもよい。
 アルキル化剤として使用。
ブロムメチル
ブロムメチル(CH3Br)
別名:臭化メチル/メチルブロマイド/ブロムメタン
 常温で気体、冷却圧縮で液化しやすい。クロロホルム類臭気、重いガス。
 液化したものは、無色透明で揮発性がある。圧縮冷却し液化→圧縮容器に入れて直射日光その他温度上昇を避け、冷暗所に貯蔵する。
 貯蔵に、飲食物の容器を使用してもよい。
 引火性が無く浸透性が強いので、果実、種子、貯蔵食糧等の病害虫の薫蒸剤。
 毒性は、クロロホルムと同様。
 薫蒸剤としてメチブロン、ブロムメチル、カヤヒュームなど。
1.2−ジブロムメタンおよびこれを含有する製剤
但し50%以下は除外する
1.2−ジブロムメタン(CH2Br2
別名:EDB
 無色のクロロホルム様の臭気のある気体。
 各種線虫の駆除。
ブロム水素およびこれを含有する製剤
臭化水素(HBr)
 刺激臭のある無色の気体。水によく溶ける。水溶液は、臭化水素酸と呼ばれる強酸。
ブロム水素酸(HBr)
別名:臭化水素酸
 ブロム水素の水溶液。無色透明あるいは淡黄色の刺激性の臭気のある液体。
 極めて反応性に富み、金、白金、タンタル以外のあらゆる金属を腐食する。各種ブロム塩の製造、臭化アルキルの製造。腐食毒。
塩素(クロル)
塩素(Cl)
 常温で、窒息性臭気を持つ黄緑色の気体。空気よりも重い。冷却すると、黄色溶液になり、更に冷却すると黄白色固体となる。
 酸化剤、紙、パルプの漂白剤、殺菌剤、消毒剤などに用いる。
ヨウ素(ヨード)
ヨウ素(I)
 黒灰色、金属様の光沢のある稜板状結晶。熱すると紫薫色の蒸気を発して昇華する。
 気密容器、風通しのよい冷所に貯える。腐食されやすい金属等と離しておく。貯蔵に、飲食物の容器を使用してもよい。
 ヨード化合物の製造、分析用、アニリン色素の製造、写真用、医療用。
ヨウ化水素およびこれを含有する製剤
ヨウ化水素(HI)
 室温で無色の刺激臭がある気体。結晶は正方面心格子。酸素を含む溶媒によく溶ける。強い還元剤。金属、金属酸化物と反応してヨウ化物をつくる。
 皮膚、粘膜を侵す(腐食毒)。
ヨウ化水素酸(HI)
 ヨウ化水素の水溶液。無色の液体。強酸で強い還元剤。
 工業用の還元剤として使用。
ヨウ化メチルおよびこれを含有する製剤
ヨウ化メチル(CH3I)
別名:ヨードメタン
 無色又は淡黄色の液体。
 ガス殺菌剤(重いガス状になる)、メチル化試薬(ある物質にメチル基をくっつけたいときに使用する試薬)。
カリウム
カリウム(K)
  金属光沢を持つ銀白色の金属。性質はナトリウムと似ているが、さらに反応性に富む。
水に入れると水素を生じ、常温では発火する。
 炎色反応は、青紫色。
 普通、石油中に貯える。水分の混入、火気を避ける。貯蔵に、飲食物の容器を用いても良い。
ナトリウム
ナトリウム(Na)
 銀白色の光沢を持つ金属。冷水中に投げ入れると浮かび上がり、すぐに爆発的に発火して苛性ソーダになる。
 炎色反応は、黄色。
 普通、石油中に貯える。水分の混入を避ける。飲食物の容器に入れて貯蔵してもよい。
 アマルガム製造用、漂白剤の過酸化ナトリウムの製造、試薬。
カリウムナトリウム合金
 カリウム、ナトリウムの性質。
 原子炉の冷却用。貯蔵に、飲食物の容器を用いても良い。
モノクロル酢酸
モノクロル酢酸(ClCH2COOH)
別名:クロル酢酸
 無色、潮解性の結晶。水によく溶ける。
 合成染料の製造原料、マロン酸エステル、グリコール等の有機合成原料、人工樹脂工業。
ジクロル酢酸
ジクロル酢酸(Cl2CHCOOH)
 無色の結晶。試薬に用いる。皮膚と目に激しい刺激。モノクロル酢酸よりも強い酸。
トリクロル酢酸
トリクロル酢酸(Cl3CCOOH)
 無色の液体。潮解性を持ち刺激性臭気を持つ。水溶液は強酸性(ジクロル酢酸よりも強酸)。アルカリで、クロロフォルムと二酸化炭素になる。
 有機合成原料、試薬などに用いられる。
クロロアセチルクロライドおよびこれを含有する製剤
 刺激性の強い無色の液体。クロロアセチル化剤(有機合成原料)。
クロロ酢酸ナトリウムおよびこれを含有する製剤
 無色の結晶。有機合成原料。
アニリン
アニリン酸
N−アルキルアニリンおよびその塩類
アニリン(C6H5NH2
 純品は無色透明の油状の液体。特異の臭気がある。空気に触れて赤褐色を呈する。
 血液に作用してメトヘモグロビンをつくりチアノーゼを起こさせる(血液毒かつ神経毒)。
 タール中間物の製造原料、医薬品、染料(アゾ染料)の製造原料。アニリン水溶液にさらし粉を加えると、紫色に変色する。
塩酸アニリン(C6H5NH2・HCl)
別名:アニリンソルト
 純品は、白色又は結晶性粉末だが、普通は空気中で表面が酸化され、緑色ないし灰色を呈する。水に溶けやすい。染料の原料。
N−メチルアニリン(CH6NHC6H5
別名:モノメチルアニリン
 淡黄色ないし淡褐色の油状液体。水に溶けない。染料の原料。
N−エチルアニリン(C6H5NHC2H5
 淡黄色ないし淡褐色の液体。
 染料の原料。
フェニレンジアミンおよびその塩類
パラフェニレンジアミン
フェニレンジアミン(C6H4(NH2)2
 三種の異性体がある。
 染料、有機合成等に使用。
トルイジン
トルイジン(C6H4(CH3)NH2
 3種の異性体を持つ。
オルト…無色の液体、空気と光に触れて赤褐色に変ずる。
メタ …無色の液体。
パラ …白色、光沢のある板状結晶。
 いずれも染料、有機合成原料。
 体内に吸収されると、メトヘモグロビンを形成する(血液毒)。
N−アルキルトルイジンおよびその塩類
N−エチルメタトルイジン
 淡黄色ないし、淡茶色の液体
トルイレンジアミンおよびその塩類
パラトルイレンジアミン
 染料の合成原料。有名な肝臓毒
トルエン
トルエン(C6H5CH3
 無色可燃性のベンゼン臭を有する液体。爆薬、染料、溶剤、サッカリン合成原料などに用いる。麻酔性が強い。
2.4−ジニトロトルエンおよびこれを含有する製剤
2.4-ジニトロトルエン(C6H3CH3(NO2)2
 針状結晶。有機合成、染料、トルイジンの原料。
ニトロベンゼン
ニトロベンゼン(C6H5NO2
 無色又は微黄色の吸湿性の液体。強い苦扁桃様の香気を持ち、光線を屈折する。水にわずかに溶け、その溶液は甘みを有する。純アニリンの製造原料、酸化剤、ミルバン油(石鹸の香料)などに使用。皮膚、呼吸器、消化器などから吸収される。
フェノール、フェノールを含有する製剤
但しフェノール5%以下の場合は除く
フェノール(C6H5OH)
別名:カルボール/石炭酸
 無色の針状結晶あるいは白色の放射線状結晶塊。空気中で容易に赤変する。特異の臭気と灼くような味を有する。本品は容易に燃焼しないが、その蒸気を点火すると白煙を上げて燃焼する(石炭酸の蒸気)。
 サリル酸、ピクリン酸、染料の製造原料、防腐剤、ペークライト、人造タンニン、等の原料。
 皮膚や粘膜に火傷をおこす(腐食毒)。
クレゾールおよびこれを含有する製剤
但し5%以下を除く
クレゾール(C6H4(CH3)OH)
 オルト・メタ・パラ−クレゾールの三異性体がある(工業的には、これらの混合物)。
 いずれも無色の液体。日光により褐色になる。フェノールより殺菌力が強く、消毒、殺菌剤、木材の防腐等に使用する。
キシレン
キシレン(C6H4(CH3)2
 ベンゼンの水素2原子をメチル基で置換したもの。3種の異性体があり、いずれも無色の液体。芳香族炭化水素特有の臭いがある。
 溶剤、染料中間体。高濃度で、麻酔性。
ベタナフトールおよびこれを含有する製剤
但し1.5%以下のものは除く
β-ナフトール(C10H8O)
別名:ヒドロキシナフタレン
 無色の光沢のある小葉状結晶あるいは白色の結晶性粉末で、かすかに石炭酸に類する臭気と灼くような味がある。光により暗色に変わり、またアンモニア性硝酸銀液を還元する。
 染料製造原料、防腐剤、医療等に使用。
ペンタクロルフェノール、その塩類およびこれらを含有する製剤
但し1%以下を除く
ペンタクロルフェノール(C6HCl5O)
別名:PCP
 刺激臭のある白色針状結晶。水によく溶ける。
 防腐、防かび、防虫剤(木材、繊維などの)、農業用殺菌剤等に使用。除草剤としては、水田初期のヒエその他の雑草の除草に効力を発揮したが魚毒性が強いので、その使用が規制された。
 ナトリウム塩もある。
ピクリン酸
但し爆発薬を除く
ピクリン酸塩類
但し爆発薬を除く
ピクリン酸(C6H3O7N3
別名:トリニトロフェノール
 淡黄色の光沢のある小葉状あるいは針状結晶。純品は無臭だが、普通は微かにニトロベンゾールの臭気、苦味あり。急熱あるいは衝撃により爆発する。
 火気から隔離し、鉄、銅、鉛の金属容器を使用しないで貯蔵する。
 皮膚に吸着すると黄色の変色を生じ、吸引すると下痢、嘔吐などの症状を引き起こす。
 試薬、染料などに使用。ピクリン酸塩類は主に爆発薬として用いられる。
ピクリン酸アンモニウム(C6H2ONH4(NO2)2
 輝黄色の安定系と輝赤色の準安定系があり、急熱や衝撃により爆発することがある。