電気めっきの表示方法についての解説

[例1]
Ep-Fe/Cu 20, Ni 25 b, Cr 0.1r/:A

 上記[例1]のようにJIS記号でめっき処理が表示されている場合、これがなにを意味するものなのか、すぐに理解できる人は、相当なめっき通です。
 ここでは、めっきのJIS記号による表示方法について簡単に解説いたします。
 まず[例1]の記号の配列を分解してみましょう。

Ep - Fe / Cu 20 , Ni 25 b , Cr 0.1 r / : A

 すると、このようになります。
 このままでは、ただ記号をバラバラにしただけなので、『JIS記号早見表』の番号をこの表に入れ込みます。
 ちなみに、この番号はJIS記号の表示順序をわかりやすくするために、勝手に付けた番号なので、何ら公的なものではないということをご注意ください。

@ - A / B C , B C D , B C D / : F
Ep - Fe / Cu 20 , Ni 25 b , Cr 0.1 r / : A

 さて、それでは順々に見て行きましょう。

 まず最初に、@Epとあります。これは、めっきを表す記号です。めっきを表す記号といっても、めっきの種類を表す記号のことではありません。ここには『電気めっき』か『化学(無電解)めっき』かを表す記号を表記します。
 Epとは、電気めっきを表す記号なので、このめっきが電気めっきであるということがわかります。

 @めっきを表す記号とAの間には、ハイフン(−)を入れて、区切ります。

 AFeとあります。これは、素地を表す記号です。Feといえば、鉄の元素記号です。このように、素地を表す記号は、素地の元素記号となります(例外として、セラミックCMやプラスチックのPLなどがあります)。つまり、このめっきは、鉄を素地としたものであるということがわかります。

 A素地を表す記号とBの間には、斜線( / )を入れて、区切ります。

 Bめっきの種類を表す記号を入れます。Cuとありますので、『銅めっき』だということがわかります。

 Bめっきの種類を表す記号と、Cの間には、記号を入れて区切る必要はありません。

 C20という数字は、めっきの厚さを表す記号です。単位はμmですので、これで、皮膜の厚さが20μmだと言うことがわかります。

 次に注意しなくてはいけない表記方法がでてきます。コンマ( ,)があって、BNiというめっきの種類を表す記号があります。そして、C25というめっきの厚さを表す記号とDbというめっきのタイプを表す記号があり、さらにコンマで区切られています。
 これは、このめっきが、『多層めっき』であることを意味します。このように、多層めっきの場合は、素地に近いめっきの構成の順に、左から右へコンマを付けて順に表示することになっているのです。

 つまり、これは『銅めっき』の上に『ニッケルめっき』を施したものであるということです。また、Dめっきのタイプを表す記号が、( b )となっているので、普通のニッケルめっきではなく、『光沢ニッケルめっき』だということになります。ちなみに、めっきのタイプを表す記号も、コンマや斜線で区切る必要はありません。

 さて、次もコンマがあって、BCr、C0.1、Drという順序で記号が並んでいますが、ここまで見てくればわかるように、これは、ニッケルめっきの上に『普通クロムめっきを0.1μm以上』を施したものだ、ということになります。D( r )は、『普通のクロムめっき』を意味します。

 その次には、斜線が引かれていて、すぐにコロン(:)があります。この間には、E後処理を表す記号を入れるのですが、なにも記入されていないので、後処理はされていないということがわかります。

 コロン(:)の次にFAという記号がでてきます。これは、使用環境を表します。Aという記号は、腐食性の強い屋外環境を意味します。

 と、いうわけで、このJIS記号の配列は、(電気めっき、鉄鋼素地、銅めっき20μm以上、光沢ニッケルめっき25μm以上、普通クロムめっき0.1μ以上、腐食性の強い屋外で使用)という意味だということがわかります。

   以上で簡単な解説を終わります。

 


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