d)鋼材(熱処理用鋼、特殊用途鋼)

4101 機械構造用炭素鋼鋼材
carbon steels for machine structual use
 通常、使用に際し、鍛造、切削、引抜きなどの加工と熱処理を行って所期の性質を得て、機械部品に仕上げられる炭素鋼鋼材。
4102 機械構造用合金鋼鋼材
alloy steels for machine structural use
 通常、使用に際し、鍛造、切削、引抜きなどの加工と熱処理を行って所期の性質を得て、機械部品に仕上げられる合金鋼鋼材。
4103 H鋼
H steels
 ジョミニー式一端焼入方法によって焼入端からの一定距離における硬さの上限、下限又は範囲を保証した鋼。
4104 窒化鋼
steels for nitriding
 アルミニウム、クロム、モリブデンなどを含有し、窒化処理して表面硬化させる鋼。
4105 はだ焼鋼
steels for case hardening
 低炭素鋼及び低炭素合金鋼で主として浸炭焼入れによって表面硬化させる鋼。
4106 強じん鋼
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焼入焼戻しによって強度とじん性を向上させて用いられる鋼。
4201 ステンレス鋼
stainless steels
 耐食性を向上させる目的で、クロム又はクロムとニッケルを含有させた合金鋼。一般にはクロム含有量が10.5%以上の鋼をステンレス鋼といい、主としてその組織によって、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系及び析出硬化系の五つに分類される。
4202 マルテンサイト系ステンレス鋼
martensitic stainless steels
 焼入することによってマルテンサイト組織となり硬化させることができるステンレス鋼。13%クロム鋼がその代表的なものである。
4203 フェライト系ステンレス鋼
ferritic stainless steels
 熱処理によって硬化せずフェライト組織を示すステンレス鋼。18クロム鋼がその代表的なものである。
4204 オーステナイト系ステンレス鋼
austenitic stainless steels
 常温においてもオーステナイト組織を示すステンレス鋼。熱処理によって硬化せず、一般に非磁性である。18%クロム8%ニッケル(18-8)鋼がその代表的なものである。
4205 オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼
austenitic-ferritic stainless steels
 オーステナイトとフェライトの2相組織を示すステンレス鋼。
4206 低炭素ステンレス鋼
low carbon stainless steels
 炭素含有量を0.030%以下で、クロム炭化物の析出による耐食性の劣化を改善したステンレス鋼。
4207 安定化ステンレス鋼
stabilized stainless steels
 チタン、ニオブ、ジルコニウム又はそれらの組み合わせを少量添加し、クロム炭化物の析出による耐食性の劣化を改善したオーステナイト系ステンレス鋼。
4208 析出硬化系ステンレス鋼
precipitation hardening stainless steels
 アルミニウム、銅などの元素を少量添加し、熱処理によってこれらの元素の化合物などを析出させて硬化する性質をもたせたステンレス鋼。
4209 快削ステンレス鋼
free-cutting stainless steels
 りん、硫黄、セレンなどの元素を少量添加して快削性を改善したステンレス鋼。
4210 塗装ステンレス鋼
precoated stainless sheets
 冷間圧延ステンレス鋼板又は鋼帯に有機塗装を焼き付けて仕上げられた鋼板又は鋼帯。主として建築物の屋根、外装、内装などに用いられる。
4301 耐熱鋼
heat resisting steels
 高温における各種環境で耐酸化性、耐高温腐食性又は高温強度を保持する合金鋼。数%以上のクロムのほか、ニッケル、コバルト、タングステンその他の合金元素を含むことが多い。
 主としてその組織によってマルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系及び析出硬化系の四つに分類される。
 なお、合金元素の総量が約50%を超える場合は一般に超耐熱合金又は耐熱合金若しくは単に超合金と呼ばれる。
4302 マルテンサイト系耐熱鋼
martensitic heat resisting steels
 焼入してマルテンサイト組織にした後、焼戻しして使用される耐熱鋼。約550℃以下において、オーステナイト系及びフェライト系と比較して強度が高い特長をもつ。
4303 フェライト系耐熱鋼
ferritic heat resisting steels
 フェライト組織を示す耐熱鋼。一般に熱膨張係数が小さく、熱伝導度が大きいため熱応力が小さく、低温度におけるクリープ強さや降伏点が高い特徴を持つ。
4304 オーステナイト系耐熱鋼
austenitic heat resisting steels
 オーステナイト組織を示す耐熱鋼。耐高温酸化性と高い高温強度をもち、一般にじん性が高く、成形性、溶接性も優れている。
4305 析出硬化系耐熱鋼
precipitation hardening heat resisting steels
 析出鋼化成を与える元素を添加し、熱処理によって優れた高温強度をもつ耐熱鋼。
4306 バルブ鋼
valve steels
 クロムの他にけい素、ニッケル、タングステンなどを主要合金元素とし、主として内燃機関用の吸気弁及び排気弁に用いられる耐熱鋼。
4401 工具鋼
tool steels
 金属又は非金属の切削、そ性加工用などの各種ジグ・工具として用いられる鋼の総称。
 用途が広く、要求性能が多岐にわたるので種類が非常に多い。一般には化学成分及び性能をを考慮して炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼に分類される。
4402 炭素工具鋼
carbon tool steels
 0.6〜1.5%の炭素を含有し、特別に合金元素を添加しない工具鋼。
4403 合金工具鋼
alloy tool steels
 炭素鋼にマンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウムなどの合金元素を1種以上添加した工具鋼。炭素工具鋼に対して焼入性、切削性能、耐衝撃性、不変形性、耐熱性などを必要に応じて改善した鋼である。
4404 高速度工具鋼
high speed tool steels
 高炭素鋼に、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、コバルトなどの合金元素を比較的多量に添加し、切削工具及び金型などに用いられる工具鋼。特に高速切削に適し、摩擦熱による高温によく耐える。一般に含有成分によって、タングステン系とモリブデン系とに分けられる。
4405 中空鋼
hollow drill steels
 主として、さく岩機用ロッドに使用される中空の棒鋼。断面形状は丸形、六角形などであり、鋼種は主として炭素工具鋼、強じん鋼、肌焼鋼(浸炭処理を行って使用)などが用いられる。
4501 ばね鋼
spring steels
 炭素系、シリコンマンガン系、マンガンクロム系、クロムバナジウム系などの鋼で、主として熱間で重ね板ばね、コイルばねなどに成形し熱処理を行ってばね性を付与する鋼。
 広義のばね鋼としては、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、冷間圧延鋼帯などのように冷間加工及び熱処理によってばね性を高め、そのまま線ばね、薄板ばねなど小物ばねに成形する鋼も含む。
4502 快削鋼
free cutting steels
 りん、硫黄、鉛、セレン、テルル、カルシウムなどを単独又は複合で添加し、快削性を付与した鋼。
4503 軸受鋼
bearing steels
 転がり軸受の球、ころ、内輪、外輪に使用される合金鋼。高速で変動する繰り返し荷重に耐える必要性から高い疲れ強さと耐摩耗性が要求されるので、鋼の清浄度や組織の均一性を重視して製造される。一般に高炭素低クロム鋼が代表的鋼種である。
4504 磁石鋼
magnetic steels
 クロム、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどの合金元素を添加した合金鋼で、焼入硬化、析出硬化などによって保磁力と残留磁束密度の高い永久磁石特性をもつ鋼。
4505 高マンガン鋼
austenitic high manganese steels
 一般にマンガン11%以上を主合金成分とし、オーステナイト組織を示す非磁性の合金鋼。冷間加工による硬化が大きいので耐摩耗性部品に用いられる。また、非磁性という特性をもつことから電磁気部材にも用いられる。
4506 非磁性鋼
non-magnetic steels
 炭素、マンガン、ニッケル、クロム、窒素などを主な合金成分とし、オーステナイト組織を示す非磁性の合金鋼。組成的には、高マンガン系、高ニッケル系及びこれらの中間タイプの3種に大別される。例えば、発電機、継電器などの電磁気部材、核融合設備及びリニアモーターカーの部材などに用いられる。
4520 クラッド鋼
clad steels
 この範疇には、耐摩耗性又は耐化学腐食性のある鋼又は合金とクラッドした鋼板及び鋼帯がある。また、通常は圧延で、しかし、時には爆着又は他の溶接プロセスによって、耐摩耗性又は耐化学腐食性のある鋼又は合金を接着した鋼板及び鋼帯も含まれる。
 合わせ鋼材ともいう。
 なお、極軟鋼、軟鋼、低合金鋼などを母材の片面に合わせ材をクラッドさせたものを片面クラッド鋼、両面に合わせ材をクラッドさせたものを両面クラッド鋼という。