(1)一般

1001
腐食
corrosion
金属がそれをとり囲む環境物質によって、化学的または電気化学的に浸食されるか若しくは材質的に劣化する現象。
1002
さび
rust
普通には、鉄表面に生成する水酸化物または酸化物を主体とする化合物。広義には、金属表面にできる腐食生成物をいう。腐食生成物の項参照。
1003
耐食性
corrosion resistance
金属が腐食に耐える性質。
1004
防食
corrosion prevention,

corrosion protection

金属が腐食するのを防止すること。
1005
防せい(錆)
rust prevention
金属に錆が発生するのを防止すること。
1006
さび止め
rust prevention
防せいと同義語。
1007
一時防せい
temporary rust prevention
作業工程、保管、輸送中などにおける短期間の防せい。
1008
アノード
anode
電流が電極から電解質に向かって流れ、酸化反応が行われる電極。陽極ともいう。
1009
カソード
cathode
電流が電解質から電極に向かって流れ、還元反応が行われる電極。陰極ともいう。
1010
標準電位列
electromotive force series
金属の標準電極電位を、その大きさの順位並べ、金属のイオン化傾向及び一部の非金属元素の電気化学的酸化反応傾向の大きさの順を示した列。電気化学列ともいう。
1011
腐食電位
corrosion potential
腐食している金属の照合電極に対する電位。自然状態における腐食電位を自然電位ともいう。それを大きさの順に並べた物を腐食電位列という。
1012
防食電位
protective potential
電気防食において、腐食を停止させるために必要な電位の値。
1013
防食電流密度
protective current density
金属の電位を防食電位に維持するために要する単位面積当たりの電流。
1014
分極
polarization
金属と電解質溶液との間に出入りする電流によって金属の電位に変化が生じる現象。
1015
分極抵抗
polarization resistance
分極における電位の変化分を電流の変化分で除した値。JIS H 0530参照。
1016
照合電極
reference electrode
電極電位の一定した電極で、金属の電位はこの電位との電位差で表す。水素電極、カロメル電極、塩化銀電極、硫酸銅電極などがある。

 基準電極ともいう。

1017
局部電池
local cell
金属側又は環境側の不均一性が原因となって、金属表面に局部的に形成された腐食電池。
1018
マクロ腐食電池
macro-galvanic cell
アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち、その位置が固定されている腐食電池をいい、異種金属接触腐食電池、通気差電池などがこれに属する。
1019
通気差腐食
differential aeration corrosion
溶存酸素濃度の差異によって生じた電池による腐食。
1020
活性態
active state
金属が環境物質と自由に反応して溶解する状態。
1021
不活性態
immunity,

inactive state

ある金属の電位を十分に卑にした場合、腐食が起こらない状態。
1022
不動態
passive state
標準電位列で卑な金属であるにもかかわらず、電気化学的に貴な金属であるような挙動を示す状態。
1023
湿食
wet corrosion
液体状の水が存在するために起こる金属の腐食。
1024
乾食
dry corrosion
液体状の水の作用を受けることなく、腐食性の気体と反応して生じる金属の腐食。
1025
腐食度
corrosion rate
ある期間に生じた単位面積当たりの腐食量をその期間で除して求められる値。
1026
腐食しろ
corrosion margin
金属製品が、使用中の腐食によって失われることをあらかじめ想定して、その分だけ増しておく厚さ。
1027
大気腐食
atmospheric corrosion
大気中で起きる金属の腐食。
1028
土壌腐食
soil corrosion
土壌中で起きる金属の腐食。
1029
均一腐食
uniform corrosion
金属表面にほぼ均一に生じる腐食。全面腐食ともいう。
1030
局部腐食
local corrosion
金属表面の腐食が均一でなく、局部的に集中して生じる腐食。
1031
孔食
pitting corrosion
金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食。
1032
脱成分腐食
dealloying
特定の合金成分が選択的に溶解する腐食。黄銅から亜鉛が溶解する場合を脱亜鉛腐食(dezincification)という。
1033
すき間腐食
crevice corrosion
金属又は金属と他の材料との間にすき間が存在する場合、すき間の内外においてイオン、酸素などの濃淡電池が構成されて生じる腐食。
1034
濃淡電池腐食
concentration cell corrosion
金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池による腐食。
1035
異種金属接触腐食
bimetallic corrosion,

galvanic corrosion

異種金属が直接接続されて、両者間に電池が構成された時に生じる腐食。

 ガルバニック腐食ともいう。

1036
糸状腐食(いとじょうふしょく)
filiform corrosion
主に塗料又は油脂などで被覆した金属表面に、糸状に進行する腐食。
1037
微生物腐食
microbiologically inducede corrosion(MIC)
土中又は水中に生息する微生物によって促進される腐食。
1038
迷走電流腐食
stray current corrosion
正規の回路以外のところを流れる電流によって生じる腐食。
1039
フレッティング腐食
fretting corrosion
空気中で金属とそれに接触する金属又は他の物質との接触面で微小滑りが繰り返し起こるとき、金属表面に生じる腐食。さっ(擦)過腐食ともいう。
1040
粒界腐食
intergranular corrosion
金属材料の結晶粒界に選択的に生じる腐食。
1041
電食
stray current corrosion
迷走電流腐食と同義語。
1042
応力腐食割れ
stress corrosion cracking
腐食と引張応力との相乗作用によって金属材料に割れを生じる現象。
1043
腐食疲労
corrosion fatigue
腐食と繰返し応力との相乗作用によって、金属材料が疲労して劣化する現象。
1044
エロージョン・コロージョン
erosion-corrosion
流動する水、土砂などの環境物質の摩耗作用と腐食作用の相乗作用によって金属に生じる損耗。
1045
キャビテーション損傷
cavitation damage
金属表面でこれに接触する液体の圧力の繰返し変動によって気泡の発生、崩壊が起こることによって金属に生じる損傷。
1046
水素ぜい(脆)化
hydrogen embrittlement
腐食、酸洗い、電解、溶接などによって生じた水素が金属中に吸蔵されて、材質がもろくなる現象。

 遅れ破壊ともいう。

1047
水素侵食
hydrogen attack
高温・高圧の水素に接する金属材料に水素が侵入して機械的に性質が劣化する現象。
1048
アルカリぜい化
caustic embrittlement
か性アルカリの存在下で生じる鉄鋼などの応力腐食割れ。
1049
腐食生成物
corrosion product
腐食によって生成した物質。通常は固体物質を指し、金属表面に付着するか又は環境中に分散して存在する。
1050
さびこぶ
tubercle
鉄鋼の表面に生じるこぶ状の腐食生成物。
1051
ミルスケール
mill scale
鋼材の製造過程において高温に加熱されるとき、空気中の酸素と反応して生成し付着している酸化物被膜。
1052
緑青(ろくしょう)
patina
銅又は銅合金上に生じる緑色の腐食生成物。
1053
油焼け
oil staining
油を塗布した金属表面に、比較的広い面積でしみ状の油じみ又はオイルステインと呼ばれる変色部分が発生する現象及び変色部分の状態。
1054
白亜化(はくあか)
chalking
塗膜の劣化の一種。塗膜表面が粉末状になる現象。
1055
ふくれ
blister
金属中又は皮膜下にガス、液体又は腐食生成物が蓄積して、局部的にふくれる現象。
1056
ピンホール
pinhole
皮膜を貫いて、素地や下地まで達している微細孔。
1057
人工海水
artificial seawater
海水とほぼ同じ化学組成に、人工的に調製した塩類水溶液。
1058
露点
dewpoint
水蒸気を含む空気やガスを冷却するとき、その水蒸気圧が飽和水蒸気圧と等しくなる温度。この温度以下になると水蒸気は液化する。
1059
結露
dew formation
露点以下の温度で水蒸気が凝縮すること。