防せい防食用語 (1)一般

101 腐食【ふしょく】

金属がそれを取り囲む環境物質によって、化学的又は電気化学的に侵される現象。

102 さび【さび】

普通には、鉄表面に生成する水酸化物又は酸化物を主体とした化合物。
広義には、金属表面にできる腐食生成物をいう。
146 腐食生成物の項参照

103 耐食性【たいしょくせい】

金属が腐食に耐える性質

104 防食【ぼうしょく】

金属が腐食するのを防止すること。

105 防せい【ぼうせい】

金属にさびが発生するのを防止すること。

106 さび止め【さびどめ】

防せいと同義語

107 一時防せい【いちじぼうせい】

作業工程中などにおける短期間のさび止め。

108 陽極【ようきょく】

電流が電極から電解液に向かって流れる極。酸化反応が行われる。

109 陰極【いんきょく】

電流が電解液から電極に向かって流れる極。還元反応が行われる。

110 標準電位列【ひょうじゅんでんいれつ】

反応に預かるイオンの活量が1であるときの電極電位を、その負の大きさの順に並べ、金属の反応傾向の大きさを示した列。

111 腐食電位【ふしょくでんい】

腐食している金属の、照合電極に対する電位。自然状態における腐食電位を自然電位ともいう。

112 防食電位【ぼうしょくでんい】

電気防食において、腐食を停止させるために必要な最低限の電位。

113 分極【ぶんきょく】

金属に出入りする電流によって電位に変化が生じる現象。

114 照合電極【しょうごうでんきょく】

電極電位の一定した電極で、金属の電位はこの極の電位との電位差で表す。水素電極・カロメル電極・塩化銀電極・硫酸銅電極などがある。
基準電極ともいう。

115 局部電池【きょくぶでんち】

一つの金属体表面における状態の差、例えば金属体の材質の不均一、接触する電解質水溶液の状態の差異などが原因となって、金属体表面の局部で構成された短絡電池。

116 マクロ電池【まくろでんち】

腐食に際して電池が形成される場合、陰極部と陽極部がはっきりと区別できる程度に大きい電池。濃淡電池・異種金属接触腐食電池などがこれに属する。

117 通気差電池【つうきさでんち】

溶存酸素濃度の差異によって起電力を生じた電池。

118 不動態【ふどうたい】

標準電位列で卑な金属であるにもかかわらず、電気化学的に貴な金属であるような挙動を示す状態。

119 活性体【かっせいたい】

熱力学的に反応傾向の大きい金属が、環境物質と自由に反応して溶解する状態。

120 不活性体【ふかっせいたい】

ある金属の電位を十分に卑にした場合、溶液中のその金属の平衡イオン活量が、ある小さな値以下となり、腐食が事実上起こらない状態。

121 湿食【しっしょく】

液体状の水が存在するために起こる金属の腐食。

122 乾食【かんしょく】

液体状の水の作用を受けることなく、腐食性の気体と反応して生じる金属の腐食。

123 孔食【こうしょく】

局部腐食が金属内部に向かって孔状に進行する腐食。

124 腐食しろ【ふしょくしろ】

金属製品が、使用中の腐食によって失われることをあらかじめ想定して、その文だけ増しておく厚さ。

125 腐食度【ふしょくど】

一定期間における腐食の平均進行速度。単位表面積、単位時間あたりの腐食による質量の現象で表す場合には、腐食度又は腐食率という。
単位として通常、mg/dm2/day(mdd)を用い、単位時間あたりの腐食による厚さの減少で表す場合には、浸食度といい、単位として通常、mm/yearを用いる。

126 大気腐食【たいきふしょく】

大気にさらされて起きる腐食。通常は屋外大気によるものを指し、温度・湿度・雨・日光・風・大気汚染物質などが腐食を起こし、又は進行させる因子となる。

127 土じょう腐食【どじょうふしょく】

土じょう中で起きる金属の腐食

128 全面腐食【ぜんめんふしょく】

金属表面全体にほぼ均一に生じる腐食。

129 局部腐食【きょくぶふしょく】

金属表面の腐食が全面的でなく、局部に集中して生じる腐食。

130 選択腐食【せんたくふしょく】

合金成分が選択的に腐食されること、又は金属組成の不均一によって、ある部分が選択的に腐食されること。

131 すきま腐食【すきまふしょく】

金属間又は金属と外の材料との間に隙間が存在する場合、すきまの内外において濃淡電池が構成されて生じる金属腐食。

132 濃淡電池【のうたんでんち】

金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池。

133 異種金属接触腐食【いしゅきんぞくせっしょくふしょく】

異種金属が電気的に接続されて、両者間に電池が構成されたときに生じる腐食。
ガルバニ腐食ともいう。

134 糸状腐食【いとじょうふしょく】

主に塗料又は油脂などで被覆した金属表面に、細く糸状に進行する腐食。

135 細菌腐食【さいきんふしょく】

土中又は水中に生息するけん気性又は好気性の特殊な細菌によって促進される腐食。

136 迷走電流腐食【めいそうでんりゅうふしょく】

正規の回路以外のところを流れる電流によって生じる腐食。電食ともいう。

137 フレッチング腐食【ふれっちんぐふしょく】

空気中で金属とそれに接触する金属又は他の物質との接触面で、相対的な繰り返し微小滑りが起きるとき、金属表面に生じる損傷。一般に変色を伴う。擦過腐食ともいう。

138 粒界腐食【りゅうかいふしょく】

金属又は合金の結晶粒界に、選択的に生じる腐食。

139 電食【でんしょく】

136 迷走電流腐食の項参照。

140 応力腐食割れ【おうりょくふしょくわれ】

腐食と引張応力との相乗作用によって生じる割れ。

141 腐食疲れ【ふしょくつかれ】

腐食と繰り返し応力との相乗作用によって、金属材料に生じる強度低下。

142 エローション【えろーしょん】

流動する環境物質(水、土砂など)によって金属が物理的に磨耗すること。

143 キャピテーション損傷【きゃぴてーしょんそんしょう】

金属表面に接触する液体に圧の低下・上昇が局部的に高振動度で起こるとき、金属表面で気泡の発生・崩壊がおこり、これによって金属が損傷を受けること。

144 水素ぜい化【すいそぜいか】

腐食・酸洗い・電解・電気防食・溶接などによって生じた水素が、金属中に吸蔵されて材質がもろくなること。
また、高温・高圧の化学装置などで活性な水素により金属材料がもろくなること。

145 アルカリぜい化【あるかりぜいか】

かせいアルカリの存在下で生じる鉄鋼等の応力腐食割れ。

146 腐食生成物【ふしょくせいせいぶつ】

腐食によって生成した物質。通常は固体だけを指し、金属表面に付着するか、環境中に分散して存在する。

147 さびこぶ【 】

鉄鋼表面に、局部的に生じるこぶ状の腐食生成物。

148 ミルスケール【 】

高温空気中で加熱された鉄鋼表面に、厚く成長した酸化物層。黒皮ともいう。

149 緑青【ろくしょう】

銅又は銅合金上に生じる緑色の腐食生成物。オキシ酢酸銅(U)、ヒドロオキシ炭酸銅(U)、オキシ硫酸銅(U)、オキシ塩化銅(U)などが知られている。

150 油焼け【あぶらやけ】

油を塗布した金属表面に、比較的広い面積でしみ状の油じみ、又はオイルステインと呼ばれる変色部分が発生する現象。

151 白亜化【はくあか】

塗膜の劣化の一種。塗膜表面が粉末状になる現象。

152 ふくれ【 】

金属中又は皮膜下にガス、液体又は腐食生成物が蓄積して、局部的にふくれる状態。

153 ピンホール【 】

皮膜を貫いて、素地や下地層間で達している微細孔。

154 人工海水【人工海水】

海水とほぼ同じ作用があるように、人工的に調製した塩水溶液。実験的に天然海水の腐食作用の試験をするために使用する。

155 露点【ろてん】

水蒸気を含む空気が冷却して飽和状態になるときの温度。この温度以下になると水蒸気は液化する。この現象を結露という。

156 結露【けつろ】

155 露点の項参照。

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